民法が定める“無効な利用規約”とは?違約金条項が否定された判例に学ぶ

「同意ボタンを押させているから、うちの規約は有効なはず」
・・・そう考えている方に、ひとつ判例をご紹介します。

令和5年、東京地裁は転売禁止の違約金条項(20万円)について、「利用者が同意していたとしても無効」と判断しました。

理由は条項の内容だけでなく、”表示のタイミング”と”画面上での見えにくさ”にもありました。

この記事では、その判決内容を整理しながら、利用規約の条項が無効とならないために必要な配慮を解説します。

定型約款としての利用規約

民法548条の2では、不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容が画一的であることが双方にとって合理的なものを「定型取引」と定義しており、その定型取引において契約の内容とすることを目的として準備された条項を「定型約款」と定義しています。

そのような定義の上で、民法では定型約款の取扱いについて、いくつかの規定が存在する形になっています。

一般的に、利用規約の多くが定型約款に該当すると考えられるため、利用規約の運用や変更に関して民法の定型約款の規定が適用されます。

これにより、定型約款が契約内容となることに利用者が合意していれば、個別の条項にも合意があったとみなされるため(民法548条の2第1項)、いちいちすべての条項に明示的に同意する必要はないという合理的な仕組みです。

※利用規約であってもその対象となる取引が「定型取引」ではない場合、例えば紹介手数料やその支払時期、返金の算定基準をサービス運営者が利用者ごとに定めるような人材紹介利用規約は、契約ごとに異なる合意がされる可能性があり、一律の定型的な取引であるとは認めがたいとして、定型約款には該当しないと判断された裁判例もあります(東京地判R6.2.16)。

なお、定型約款のルールに基づく利用規約の変更制限については、こちらの記事で詳しく解説しています。

すべてが有効とは限らない

ただし、同条2項では重要な例外が定められています。

それは、「相手方の利益を一方的に害する条項」は合意をしなかったものとみなすというルールです。

この「一方的に害する」かどうかは、条項の内容だけでなく、その表示方法や利用者の認識可能性なども含めて判断されます。

高額な違約金条項が無効と判断されたケース

実際に、この例外規定の適用により、規約の一部の条項が無効と判断された裁判例(東京地判R5.8.24)があります。

ある商品について転売禁止と定めているなかで、その商品の購入者が転売したことに対して販売元が「利用規約で転売禁止としており、違約金として20万円と利息を支払わなければならない」などとして購入者を訴えた事案です。

購入者は、購入の最終段階で表示され、転売禁止や違約金についての記載のある利用規約に形式上は同意していました。しかし裁判所は以下の点を理由に、この違約金条項は無効と判断しました。

  • 一般的に、転売禁止商品であっても、違反した場合に必ずしも違約金が発生するとは限らない
  • 違約金の額が購入額と比べて高額(20万円)である
  • 違約金条項は購入手続きの最終段階で初めて表示された
  • その条項が画面上で容易に認識できる状況ではなかった

これらの事情を総合的に考慮し、裁判所は「民法548条の2第2項に該当し、合意内容とはならない」と判断しました。

つまり、利用規約に同意していたとしても、それだけでは有効とは言えないということを、明確に示した事例です。

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利用規約を「守らせる」ために必要な配慮とは?

定型約款のルールや先述の裁判所の判断を踏まえ、サービス提供者や事業者が利用規約を適切に機能させるためには、以下のような点に留意する必要があります。

  • 条項の内容が合理的で、過度に利用者の権利を制限したり義務を課すなどの負担になっていないかを確認する
  • 特に不利益条項(免責、違約金、契約解除など)は、目立つように明示し、十分な周知を図る(スマートフォンのように画面が小さい場合は特に注意が必要です)
  • 規約の提示タイミングや表示形式が、利用者にとって認識しやすいものかを見直す
  • 法的妥当性について、必要に応じて専門家のチェックを受ける

利用規約はトラブルを予防するための大切な道具ですが、内容や運用方法を誤れば「効力がない」と判断されるリスクがあるのです。

ただ作成すればよいのではなく、利用者との間の契約であるという認識のもとで、適切な運用が求められます。

(免責条項が無効となるリスクについてはこちらも参照ください)

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