ECサイトを運営する上で、利用者との間で起こりうる様々なトラブルを未然に防ぎ、円滑な運営を実現するために、利用規約は非常に重要な役割を果たします。
だからこそ、多くのECサイトが利用規約を設けている現代においては、単に用意するだけでなく、質の高い利用規約を作成することが、利用者からの信頼性の向上とリスク軽減に繋がります。
今回は、ECサイトの利用規約を作成する上で気をつけたい6つのポイントを取り上げてみます。
1. 会員登録・退会関連
ECサイト以外のサービスにおいても一般的な「会員登録機能」ですが、ECサイトでもまずは会員登録を必要としている場合はよくあります。
この会員登録に関する規約では、登録資格、登録情報の取り扱い、退会手続きなどを明確に定める必要があります。
ECサイトの利用を開始するための基本的なルールを定める部分です。
(例)
「本サイトの会員となることを希望する者は、本規約に同意の上、当社所定の手続きに従って会員登録を行うものとします。」
「会員は、当社所定の手続きによりいつでも退会することができます。」
2. 商品の売買契約
一般的なウェブサービスの利用規約との大きな違いは、店舗と利用者との間で成立する「売買契約」に関する規定が必要になる点です。(※モール型など、サービス運営側が売買契約当事者にはならない場合もあります)
この売買契約に関する規約では、商品の注文方法、支払い方法や手数料、配送方法などのほか、売買契約が成立するタイミングというのを明確に定める必要があります。
これは利用者と店舗の間で認識のずれが生じやすい部分であり、例えば「購入ボタンを押したとき」に商品売買が確定する(売買契約が成立する)と考えた利用者がいた場合、在庫切れなどの理由で商品を発送できない状況になったときにトラブルに発展するリスクがあります
(例)
「利用者は、本サイトに表示された商品の購入を希望する場合、当社が定める手続きに従って注文を行うものとし、当社から注文確定メールが送信されたときに当該商品にかかる売買契約が成立します。」
「商品の代金は、当社が別途定めて「ご利用案内」ページに掲載する方法により支払うものとします。なお、支払いに要する手数料は、利用者の負担とします。」
「商品の配送は、当社が指定する方法により行い、配送にかかる送料は別途定めるものとします。」
3. アカウント情報の管理責任
ECサイトのアカウントは、利用者の購入履歴や個人情報など、重要な情報と紐づいている場合が多いです。
そのため、ID・パスワードなどECサイトにログインするためのアカウント情報の管理は非常に重要なものとなりますので、不正ログインやなりすましを防ぐためにも、利用者の自己責任によるアカウント情報管理をしっかり明示することが大切です。。
(例)
「会員は、自己の責任において、本サイトのIDおよびパスワードを厳重に管理するものとし、他人に知られることのないよう適切な措置を講じるものとします。」
4. 消費者契約法への遵法性
消費者契約法は、消費者と事業者間の情報格差を是正し、消費者を保護するための法律です。利用規約を作成する際には、一方的に消費者に不利な条項など消費者契約法に違反する条項は無効となることを念頭に置く必要があります。
例えば、「当社は損害賠償責任を一切負わない」といった条項は無効とされる可能性が高いですし、利用者の解除権を不当に制限する条項も同様です。
利用規約を作成する際は、消費者保護の観点を持ち、専門家の意見も参考にすることをおすすめします。
5. 返品・交換・キャンセルのルール
返品や交換、キャンセルに関するルールは、利用者の関心が高い部分の一つです。
ECサイトなど通信販売にはクーリング・オフ制度は適用されないため、返品・交換を受け付ける条件(不良品の場合、誤送の場合など)、期間、送料の負担、返金方法などを具体的に記載することで、トラブルを未然に防ぎ、利用者の安心感に繋がります。
(例)
「商品到着後7日以内にご連絡いただいた場合、かつ未使用品の場合に限り、返品・交換を承ります。利用者都合による返品・交換の場合、送料は利用者のご負担となります」
6. 購入やレビューに関する禁止事項
ECサイトにおける禁止事項は、一般的なウェブサービスで想定される禁止事項に加えて、転売目的での大量購入の可否や、レビュー・口コミに関する禁止事項などについても検討することが重要です。
(例)
「本サイトの利用にあたり、会員は以下の行為をしてはならないものとします。
(中略)
・営利を目的とした商品の転売行為
・虚偽または誇大なレビューを投稿する行為」)
信頼されるECサイト運営のために
同業他社のものを流用したり、テンプレートを簡単に変えた程度のものではなく、自社サービス内容を十分に勘案して利用規約を作成し、適切に運用することは、利用者との信頼関係を築き、無用なトラブルを避けるための第一歩です。
ECサイトの利用規約を新規作成したり、見直したりする場合は、今回ご紹介した6つの注意点を参考にしつつ、自社のECサイトに適した規約を作成することが重要です。
また、自社だけで作成する場合は気が付きにくい点などもありますので、専門家に相談して作成することも有効な手段です。